Dr.りえのお話

2011.10.01更新

 ウィキペディアによると、奇跡とは「人間の力や自然現象を超えたできごと」とあります。まさしく私の大切なメルモは何度もその奇跡を起こしてくれています。

   メルモは2007年から鼻腔腺癌という癌と戦っています。(Drりえのお話 No.3 うちの子が癌になりました。参照
 対戦方法は放射線治療と民間療法(サプリメント中心)です。メルモの癌の進行状況からみると、癌細胞をすべてやっつけることはできないため、3カ月~2年ぐらい癌の進行を抑える事を目標に放射線治療を開始しました。
 放射線治療は(ご存知の方もいらっしゃると思いますが)限度なく照射できるものではありません。そもそも放射線とは癌細胞をやっつける治療ですが、その周辺の正常な細胞にもダメージが生じます。臓器ごとにある決められた量以上の放射線を当てると、正常組織も弱り放射線による害が出ます。また、正常細胞が受けた放射線の影響は何年経っても多少残りますので、同じ場所に再度放射線を照射することが出来ないことが多いのです。

 メルモの照射部位は鼻です。小さなメルモは鼻の長さが1cmぐらいしかありません。そしてその上には脳があり、眼があり、下には口があり、舌がありと、生きていくのに大切な正常組織がわんさかあります。当初の説明では、おそらく治療中に口腔内がただれ食事が取れなくなり、また、眼は見えなくなるのではないかという説明でしたが、最大照射量と言われている44Gry照射中は全く副作用が出ず、麻酔の影響も出ませんでした。 

 
                                                                                       

 以後3カ月毎にCT検査を行って、癌の進行状況を観察していました。
                                                                                                        

 そして1年と少し経った頃から、少しずつ癌細胞が活動し始めました。南動物病院の先生になんとか手はないのか相談しましたが、手は無いの一点張り・・・。

 そんな時、麻布大学の腫瘍科を紹介していただき、そこで放射線治療の圓尾先生に出会いました。  圓尾先生は、私が獣医師であり、麻酔、放射線の副作用等に関しての理解があることなどの理由から、放射線量越えての照射をしてみましょうということになりました。以後、メルモの鼻つまりの症状から約1~3カ月毎の照射をしています。計算上メルモの放射線総量は120Gryになっており、麻布大学では「奇跡の子」と言われているそうです。(奇跡の症例として、雑誌で紹介される予定です。)

                                                                                                  

 さらにメルモの奇跡は続きます。 

 実は7月中旬、アクシデントでメルモが心肺停止に陥りました。(ベットからの落下)すぐに1階の病院で蘇生処置を始めました。3分、4分・・・。時間だけが過ぎ、メルモは一向に戻ってきてくれない!!。メルモ、メルモ。私は叫び続けましたが戻ってきてくれない。
6、7分ぐらいたった頃でしょうか。瞳孔も開き、もうメルモをこの世に戻すことは無理だと2階の自宅にメルモを連れていき、主人に電話をしようとしていた時、「キュー」とメルモののどの音が・・・。えっ!。すぐ1階にメルモを連れていき、再度蘇生処置をすると、なんと、なんと、ずっと止まっていたメルモの呼吸が戻ってきたのです。その後、意識も戻り、冷たくなっていた体も温かくなり、外来始まる頃までには私を目で追うまでに回復してくれました。・・・奇跡・・・。12歳という年齢から、長期間の酸欠の後遺症は重いものであろうと覚悟はしていたのですが、2週間ぐらいでふらつきながらも立てるようになりました。ただ、落下の際舌を噛み切ってしまったようで、あのメルモの可愛い舌が半分以上無くなってしまいました。そのため、かたいフードやお水を飲んだりができなくなってしまったのですが、それも自分で克服し、お誕生日(8/2)までにはケーキも食べれるようになり、さらにお口の中にフードを入れてあげれば一生懸命にカリカリと食べたり、顔を半分以上つけてお水も飲めるようになりました(*^^)v。
 

 ただ、そんなかんなしている間に鼻が詰まりはじめ、恒例の放射線照射が必要な時期になってきました。いままでの体の状態とは違うメルモに麻酔&放射線照射というリスクは大丈夫であろうか?。不安と闘いながらも癌の増殖も怖いため、8月24日に放射線治療を受ける事に決めました。
                                                                                                

 その選択が良かったのか、悪かったのか(>_<)・・・。
 当日の放射線が非常に込み合っていた(水曜日が放射線照射日なのですが、前週がお盆休みだったため)ので少し粗雑に扱われてしまったことや、毎回メルモに麻酔をかけて下さる方がいらっしゃらなかったことなど、悪い条件が重なってしまったためか偶然か。麻酔からは無事覚醒したのですが麻酔後のメルモの状態は非常に悪く、さらに毎回持参している緊急治療セットを持参するのを忘れてしまっていたため、獣医師であるにもかかわらず、私はメルモに何もしてあげる事が出来ないまま、可哀想にメルモは 大学からの帰路5~6時間、ずっ~~~と咳込み、最悪の呼吸状態のまま頑張ってくれました。
 

 帰宅し、酸素吸入などの治療後少し容体は落ち着いたものの、次の日の午後まで咳は続き、小さな体に多大なストレスがかかっていました。
 

 また、家の修繕工事なども重なり、メルモには耐え難いストレスだったのか、放射線の脳への影響なのか。(放射線総量を考えると、脳への影響が今まで出ていない方がおかしい)メルモの脳に異常を来してしまったのです。手、足、首は硬直状態、40度以上の発熱、異常な興奮状態・・・。いつもはおとなしいメルモが「ギャー、ギャー、ギャー、ギャー」と泣き続けます。昼も、夜もかまわず、無意識に眼をひんむいてひたすら泣き続ける・・・。抗てんかん薬を使おうが、何を使おうが、一向に治まらない・・・。本当はこんな時、麻酔をかけて眠らせるのですが、放射線治療の際に血管確保にミスがあったため、取れる血管がない・・・。私は獣医師なのに、どうしてもあげる事も出来ない・・・。

                                                                                                        

 ずっ~と、ずっ~とメルモを抱き「頑張って、頑張って」からしだいに「苦しかったら楽になってもいいんだよ」と・・・。
 そんな興奮状態が2日続きメルモとの徹夜が2日目になったころから、硬直は変わらないものの、少しだけ眠ることが出来るようになってきました。眠ってるときのメルモは穏やかで、次に目が覚めたら普通に戻ってくれているのではないかと期待をするのですが、起きると興奮状態・・・。私の寝不足もピークにさしかかってきた4日目頃から、寝る時間が増えいつしか昏迷状態(昏迷とは、繰り返し強く呼びかけると一瞬だけ反応がある意識障害で、一方昏睡はどんなに強い呼びかけを繰り返しても反応できない意識障害)に。興奮が始まった当初は、意思の疎通(感情表現の豊富なメルモの笑った顔や喜んだ表情を見る事が出来ない事)が出来ない事が悲しくてつらかったのですが、この頃になると、ぬいぐるみさんのように横たわっているだけでも、メルモが苦しくなければ肉体だけでもあってくれればいい、という感情に変わってきていました。
 

 そして奇跡が。

 あれから1ヵ月。今、メルモは目が合えば笑うし(^O^)、ふら付きながらも自力で立ったり歩くことだって出来ます。食欲も旺盛です(*^。^*)。
 高齢だし、癌持ちさんなので、メルモの人生は確かに最終章には入ってきていると思います。でも、そんな中メルモが毎日楽しく暮らしてくれて、もうこの世で思い残すことはない!と思った時、私の元から旅立っていくでしょう。
 人生にはどう考えても神の力が加わったとしか思えない出来事など、何度か奇跡があります。メルモの事に関しては、私を助けてくれているのか、メルモを助けてくれているのかわかりませんが、すべての出来事、周りの人々に感謝しつつ日々生きていきたいと思っています。

 メルモの事を気にかけて下さっている皆さん、本当にありがとうございます(^_-)。
 「みんなありがとう(*^_^*)。わたしこっちでもう少しおいしい物食べようと思ってま~す(#^.^#)。 byメルモ」
 

投稿者: マリア動物病院

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